ことばの不思議

母語?母国語?

 「母語」とか「母国語」とか、聞いたことはあると思います。皆さんはどう使い分けていますか。
 ことばの習得は、赤ちゃんが母親のおなかの中にいるときからはじまっています。生まれてからは、母親や父親などの養育者とコミュニケーションをとることで、少しずつ養育者のことばを理解していきます。こうして身につけていく、人が初めて触れて学んでいくことばのことを「母語」(英語では mother tongue )といいます。子供は、母親のおなかの中で初めてことばに出会い、多かれ少なかれ、生まれた後も母親が中心となり育てられる過程でことばを学んでいきます。「母語」には母から学ぶことばという意味が含まれています。
 もしかしたら、「母国語」という言いかたのほうが慣れてい方もいるかもしれません。「母国語」というと、母国で話されていることばと捉えることもできるため、言語学者や言語教育者は、「母語」と「母国語」を使い分けています。例えば、アダーさんは生まれた国と国籍はインドですが、赤ちゃんの時にイギリスへ移り、イギリスで育ちました。母語は英語で、ヒンズー語は日常会話程度話せます。アダーさんの母親はイギリス人で、話すことばは英語です。父親はインド人でヒンズー語を話しますが、英語も流暢です。こういった環境で育ったので、アダーさんは英語が母語となりました。このように、母国語と母語は必ずしも同じとは限らないのです。